子犬の旅立ち

3月12日生まれの二頭の雄の子犬たち。仮の名前でキラとアスランと名付けた。
母親のヒルダはとても子犬をかわいがりマメに面倒を良く見ていた。
私が子犬に触ることはなんとか許していたが、それでも抱き上げるのは不可能だった。ヒルダは元々Hi%というのもあったが、後天的影響もあってかなりのシャイ。子育て中にそれは明確に現れていて外に見知らぬ車があったらそれでウロウロと落ち着かず子犬を蹴飛ばす時もあった。
友人からのアドバイスで子犬は離乳食を与える生後三週間で完全に親から引き離すことにした。
私が散歩に連れ出している間に子犬を室内のケージに移動させてもらう。帰ってきたヒルダは子犬が居ないことに慌てて新聞紙を掘り返したり犬舎をすみずみまで探しまわった。しばらく落ち着かないだろうと思っていたが意外にも遠吠えなどはせず、三日目には普通に戻った。子供が野生下では病気やあるいは他の動物に食べられていなくなることは珍しくはない為に本能の強い犬ほど平常に戻りやすいとは聞いていたけど、ここまであっさりと諦めるとは思ってなかった。でも人間にとってはこの方が助かる。

子犬はまだよちよちしだしたばかりだと言うのにケージの隅で身を固くして人を見ればうなり声を上げていた。まるで野生の狸か狐を捕獲してきたようだ。
警戒心の強い子犬でも環境の変化に対する順応性は高く、離乳食を上げたり毎日の時間の大半を子犬の側で過ごし、夜は子犬の横で寝ることですぐに懐いてきた。部屋には他に犬は居ないので人間に頼らざるを得ない環境を作り、それが人との結びつきを強くする。
生後一ヶ月を過ぎてからは友人らが子犬を見に来て、抱っこしてたっぷり遊んで可愛がってもらう。子犬は人間のぬくもりを学び、その頃には人に対して唸ることはほとんど無くなった。
生後一ヶ月過ぎに二種のパピーワクチン接種。ぐんぐんと成長する子犬は部屋のものを破壊して人に噛み付いて段々とハカイダーとしての本性を現すようになってきた。そんな子犬に40日を過ぎたあたりからはしつけを入れ始める。噛み付いたり壊してはいけないものを口にしたら「それはダメ」というのをしっかりと人間が教える。子犬はとまどい反抗的に噛みついたりしてきたが、それも止めさせる。食べ物やおもちゃを使っての誘導はしない。明確に何がダメかを子犬に伝えて行く。犬はなんとなくいい子にはならない。人が教えることで学んでいく。その学びはとてもシンプルだ。

子犬は二ヶ月前には私の声ひとつでいたずらを諦めるようになってきた。自分の主張は通じないということをこんなに小さな子犬でもしっかり学ぶ。この頃には作業場にサークルを置いて昼間はそこで過ごし夜に室内に移動させていた。作業場は騒がしい機械音が響いててそういう環境に置き、常に横に人が居るものの自分を気にかけるのではなく遊びを誘っても相手にしてもらえない。人間側から子犬を遊びに誘ってもらうが、自分の要求は通らない。
この頃には混合ワクチンを接種する。更にマイクロチップも装着した。そうして五月下旬にはアスランがはるばる神戸から新オーナーが迎えにやってきて一日子犬と遊び、翌日には飛行機で新居へ旅立った。一頭残されたキラは寂しがって泣いたがそれもすぐに諦めて大人しくなった。アスランはオーディンという名前をもらった。家にはシニアのラブがいて彼のいい先生になっておりまた狼犬オーナーが周りに何頭か居るので色々と教えてもらってすくすくと成長しているとのことだった。
一頭旅立ちを待つキラは毎日サークルで物わかりよく大人しく過ごし、外に連れて行けばよく遊び、客人に愛想をふるった。
うちには預かりを含めて5頭の狼犬がいるが、遊ばせるのは人間が連れて行く時だけ。その中でもごまちゃんはコリーの優しい気質を発揮して子犬を献身的に可愛がり、どんなに噛み付かれても決して怒ることなく相手をしていた。ハイネも相手はするけど子犬がのしかかればたちまち唸って叱りつけるので子犬はあまり側に行くことはなかった(笑)
キラは身体と共に心の成長が著しい時期でもあるので積極的に連れて行くようにした。コリーを飼ってる友人宅に遊びに行き、犬の集まる河川敷にも連れて行く。そこでも自由気ままにはせずに特に外ではノーリードにはせず遊ばせるようにした。
そんな中、地元でしつけ教室があったのでキラと共に参加した。キラは音の反響する車庫でたくさんの人や犬、マイクの音という状況だったが全く臆することなく静かに私の足下で大人しく座ったり伏せをしていた。
他の犬から遊びに誘われてもじもじしてもリードで合図を送るとすぐに諦める。よく訓練された犬だと見てる人にも褒められた。もちろん、我慢ばかりではなく、うんと遊んで楽しい思いもさせる。キラは仕方なく我慢するのではなく、そうすることが当たり前になっているので、ストレスにはならない。
同じようにいけないことをした時にはがっちりと叱る。頭がいいので色々と自分の要求を通そうと頑張るが、それはダメだと強く叱る。成犬を叱るのと同じくらいに強いので、こういう厳しさに馴れない人にはかなりびっくりされるがそれがこういう作業犬や使役犬向きの犬種には必要だと私は思ってる。ただし、この時期は道具はほとんど使わないで人の手できっちり叱るやり方だ。(もちろんひっぱたくとか殴るは御法度だけど)
たった三ヶ月の子犬でもこれだけ学ぶんだ、と感じることも多いし、大型犬はちょっと大きくなってから改めてしつけと思っても難儀することも多い。

そうしてキラも新しいオーナーの元へ旅立つ日が近づいてきた。
怒濤のように過ぎた三か月。それが終わった時に一抹の寂しさはあるものの、オーナーに引き渡すことでブリーダーの役割は完了する。その充実感と喜びは寂しさを遥かに上回る。
狼犬という純血種ではない犬。野性味が強く扱いを間違えれば問題行動を起こし、手に負えなくなる犬も少なくない犬種。あえて野生の血を導入して作り出す。そこに魅力は沢山あるけどそれ以上に苦労も多く飼いやすい犬ではない。だからこそ、細心の注意を払い、人間社会で暮らしやすいように手を掛けて育てることが不可欠だと感じている。
色々とアドバイスを頂いてる訓練士の友人が犬と人との関わりをほぼ一生に渡って決定させるのは離乳食のあたりの育て方と言っていた。そこでどう扱っていたかで犬が人間に対する気持ちが決まってくるとのこと。更にそこには血統的な要因も欠かせない。特に人に対する攻撃性は血統の比重が大きいという。
幸いなことにうちから旅立った犬達や、アドバイスを受けて同じように子育てを行ってもらったnociwの子供たちは人を信頼し人に寄り添う狼犬として育ってくれている。

自分にとってブリーディングは「作品を作ること」すなわち、芸術だと認識している。
頭の中で描きそれを形にして行く作業。そこにもちろん命に対する謙虚さと敬意が欠かせない。
そうして子犬たちとオーナーの幸せを強く願いまた次のブリーディングへ思いを馳せて行く。

koinu03.jpg

koinu02.jpg

IMG_0027.jpg

狼犬の飼育体験の同人誌を発行しています。通販は下記の同人誌専門書店でどうぞ。(頒布は書店委託料が上乗せとなっていますのでご了承下さい)

アリスブックス
alice_banner_s.png

こみけも!
200a.png

にほんブログ村 犬ブログ 狼犬へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

大森山動物園にて物品販売で参加します

ギリギリの告知になりましたが、今年で40周年を迎える大森山動物園の物品販売で参加することになりました。
本日6月2日の「春の動物ふれあいフェスティバル」が開催、実施します。
場所は園内、王者の森のすぐそばです。
ラインナップはイベント参加のものとほぼ同じで、狼犬の同人誌とグッズです。
動物園での販売参加は初めてのことなのでドキドキですが…よろしくお願いします。

イベント内容はこちらで
http://www.city.akita.akita.jp/city/in/zo/newsevent/event/2013/spring/default.htm#event
         
プロフィール

HERO

Author:HERO
狼犬のブリーダー15年やってきましたが看板下ろして、これからは愛犬とののんびり生活に入ります。
2001年にHigh%の狼犬ロックを迎えてからこの犬にはまり、躾やトレーニング、繁殖、保護など様々に関わって来ました。
今現在は四頭の狼犬と一頭のチワワで豪雪地帯の秋田県でのんびり楽しみながら生活中。
出来る範囲で犬の愛護保護にも関わってます。命の教室に狼犬と共にボランティア参加。
今は狼犬の飼育体験を元にした同人誌を発行。アリスブックスとコミックZINにて通販中。
首都圏を中心にコミケや生き物系イベントにも参加しています。
動物取扱業/秋田県 販売 動15-25

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる